2016年3月20日日曜日

毎日新聞「となりの障害」 第2部にて吃音(きつおん・どもること)が取材 塩田彩記者

毎日新聞 「となりの障害シリーズ」 第2部 吃音が取材報道されました。
2016年現在、かなり吃音について詳細に取材が行われている記事だと思います。
塩田彩記者の高いスキルが光ります。
単発の吃音記事では伝えることができない、濃厚な内容です。

毎日新聞ではとなりの障害シリーズを昨年冬から新連載として開始しています。
第1部は難聴をテーマに取材していました。
こちらは別の記者の取材ですが、この記事も色々な視点から書かれていました。


注意!!
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http://stutteringperson.blogspot.jp/2016/03/2.html




●となりの障害
吃音とともに/上 言葉がうまく出てこない 塩田彩記者

 話す際に特定の言葉の一部が出にくかったりどもったりする「吃音(きつおん)」を抱え、周囲から症状を理解されず苦しむ人たちがいる。日常生活に支障がありながらも、外見上の特徴がないため、周囲に気づかれにくい障害を持つ人たちを取り上げる「となりの障害」。第2部は、吃音のある人たちの現状と支援の課題を伝える。

吃音

 特定の言葉の一部が出づらかったりどもったりする障害。特徴的な症状は「……っおはよう」と最初の音が出ない▽「お、お、お、おはよう」と一部を繰り返す▽「おーーはよう」と一部を伸ばす−−など。人によって言いづらい言葉は異なり、症状には波がある。ほとんどが幼少期に発症し、8割は5年以内に自然治癒するが、大人まで症状の残る人が全人口の約1%いる。発達障害の一種とされ、7割が遺伝子要因と考えられている。近年の研究では、脳の神経経路に異常があり、発話中枢と運動中枢の接続の一部が不十分なことで引き起こされる可能性があることが分かってきたが、治療方法は確立されていない。

 連載への感想や、話しづらさで苦労した経験、吃音の家族と暮らす体験談などをお寄せください。郵便は〒100−8051(住所不要)毎日新聞生活報道部「となりの障害・吃音」係へ。メールは表題を「となりの障害・吃音」として、kurashi@mainichi.co.jp、ファクスは03・3212・0256へ。

http://mainichi.jp/articles/20160317/ddm/013/040/003000c


●となりの障害
吃音描いた漫画に広がる共感 作者「克服より、どう生きていくかが大切」

押見修造さんインタビュー

 漫画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(2012年、太田出版)は、吃音(きつおん)のある女子高生が主人公だ。作品中では「吃音」という言葉こそ出てこないものの、うまく会話ができず周囲になじめない主人公の姿が描かれ、同じような悩みを抱える多くの人の共感を呼んでいる。著者の漫画家、押見修造さんも吃音を持つ。作品に込めた思いを聞いた。【聞き手・塩田彩】


 −−あえて作品の中で「吃音」という言葉を出さなかったのはなぜですか。

 押見さん 吃音という障害を前面に出すと、個人的な部分が見えにくくなってしまう気がして。引っ込み思案であったり、人を見下しがちだったり、卑屈だったり……。僕にとって吃音は、ただ言葉がしゃべりづらいというより、そういう自分の性格と一緒くたになった問題だった。それが自分の青春でもあったので、それをそのまま描きたかった。青春の卑屈でどろどろした部分を描きたいと思ったんです。

 −−主人公以外の登場人物も、それぞれ周囲に溶け込めない苦労を抱えていますね。

 押見さん 「障害がある良い人たち」の話にはしたくなかったんです。志乃ちゃんが歌が下手な友達を笑う場面があるのですが、自分が苦しいからといって他人に対して寛容であれるかというとそうでもない。自分と違う特徴を笑ってしまったり、向き合えなかったり、逃げたりもする。人それぞれ何かしら自分で持てあましている部分があるけれど、それを克服するのではなくて、抱えたままでどう生きていけばいいのか、という話にしたいなと思っていました。

 −−改めて、作品を通して読者にどんなことを伝えたいですか。

 押見さん 自分の場合は漫画という手段があったので、吃音があってもなんとか生き残れた。でも仮に漫画家になれなくて、就職活動などで苦しんだりしたとしても、どこかで世界が反転する瞬間がくると思うんです。それは、吃音やその他の苦しさについて、乗り越えたり克服したりするのではなくて、現状を認めるというか……。僕は、問題は何も解決していなくても、いつか「それでも大丈夫」と思える時がくると思っていて、その瞬間がくるということを信じることができれば、苦しくてもなんとか生きていける気がするんです。そういうことを言いたかった気がします。

 おしみ・しゅうぞう 1981年、群馬県生まれ。漫画家。2001年にデビュー。近著に「惡の華」「ハピネス」「ぼくは麻理のなか」など。

http://mainichi.jp/articles/20160315/mog/00m/100/003000c


●となりの障害
吃音とともに/中 正しい知識知らないまま

 「(言葉に)詰まっちゃうと焦る。みんなを待たせちゃうから」「歌を一緒に歌うと吃音(きつおん)でないよ」−−。東京都江東区立南陽小学校で2月、通級指導教室「ことばときこえの教室」のグループ学習が開かれた。この日は吃音のある小学1〜6年生14人が参加。ゲーム形式で、自分の体験について語った。

 吃音の研究に携わる「日本吃音・流暢(りゅうちょう)性障害学会」の長沢泰子理事長は「吃音の相談機関や治療機関が少ないことで、正しい知識や対処方法を知らないまま苦しむ当事者も多い。専門的に診ることのできる言語聴覚士の育成や相談窓口の設置などの支援が必要」と語った。

 自身も吃音があり、吃音を研究する九州大学病院耳鼻咽喉(いんこう)科の菊池良和医師に、子どもに吃音症状が表れたときの周囲の大人の対応の良い例、良くない例を挙げてもらった。

■良い例

・吃音の症状が出ても子どもを注意しない

・話し方ではなく話す内容に注目して子どもの話を聞く

・吃音以外にも目を向け子どもに自信を持たせる

・吃音を園・学校でからかわれていないかなどを子どもとオープンに話す

■良くない例

・「ゆっくり落ち着いて」など子どもに話し方のアドバイスをする

・子どもが話す内容より話し方に注目する

・吃音について話題にしない、子どもと話し合わない

・子どもの吃音の原因を親のしつけだと思う

言語障害の通級指導教室

 通級指導教室は言語障害や聴覚障害などのある児童生徒を対象に、主に公立小学校に設置されている。児童生徒は普段は通常学級に籍を置き、日中や放課後に通級指導教室に通う。設置校の教諭が指導を担当することが多い。言語障害の通級指導教室は「ことばの教室」などと呼ばれる。設置は各自治体に委ねられ、設置割合などは定められていないため、地域によって整備状況に差がある。文部科学省によると、言語障害で通級指導を受ける児童生徒は2014年度、小学校で3万4071人、中学校で304人。

 ◆吃音のある人でつくるNPO法人「全国言友会連絡協議会」(http://zengenren.org)は各地に支部があり、吃音のある中高生の集いなども開催している。


http://mainichi.jp/articles/20160318/ddm/013/040/042000c


●となりの障害
吃音、さまざまな場面でコミュニケーションに悩み 3人に体験を聞く

 友人との会話や就職活動、職場の人間関係−−。吃音(きつおん)のある人たちは、日常のさまざまな場面で人とのコミュニケーションに悩む。家族にも理解されず1人で苦労を抱え込む人もいる。20〜30代の3人に、それぞれの体験を聞いた。

http://mainichi.jp/articles/20160317/mog/00m/100/015000c

●となりの障害
吃音とともに/下 面接や会話、就労の壁に

話せないから解雇

 「退職届を作ったから名前を書いて」

 東京都内の自営業の男性(35)は、約6年前、正社員として就職した通販会社の上司に、そう告げられた。まだ入社して約1カ月。吃音(きつおん)があり、電話でうまく話せないことを理由にした事実上の解雇だった。受話器を取った後、会社名を言おうとすると言葉に詰まっていた。

 「中途採用で社内の別部署にも回せなかったから、解雇は仕方ない」と男性。今の仕事でのやりとりはメールがほとんどだ。吃音のことは仕事相手や周囲の人に話していない。「相手が吃音のことを知らない人ばかりだし、話したからと言って自分の症状がなくなるわけではない」

 ●障害者手帳取得し

 症状が重い人の中には、障害者就労を目指す人もいる。新潟県十日町市の男性(52)は、言葉の一部を繰り返す「連発」と、言葉に詰まる「難発」の重い症状がある。都内の専修学校を卒業後、地元企業で事務職に就いたが、電話でも対面でもうまく話せず、必要なことを上司に尋ねることもできなかった。解雇されたり自分から辞めたりを繰り返し、計9カ所の職場を転々とした。2007年以降は両親の介護に追われ、職に就けていない。年齢的にも再就職は難しいと感じる。

 14年秋、吃音のある人で作る「にいがた言友会」を通じて、吃音で精神障害者手帳を取得できると知った。心療内科を受診し15年6月、精神障害者手帳3級を取得。現在は障害者就労枠で就職活動中だ。「仕事では話すことを避けられない。一般就労が難しい人は障害者就労という選択肢もあることを知ってほしい」

http://mainichi.jp/articles/20160319/ddm/013/040/014000c


●となりの障害
社会の無理解が当事者を追い詰めている

「吃音とともに」取材後記

 話す際に特定の言葉の一部が出にくかったり、どもったりする「吃音(きつおん)」を抱えて苦しむ人たちを毎日新聞くらしナビ面で連載「となりの障害 吃音とともに」(3月17日から3回)として取り上げ、ニュースサイトに関連インタビュー記事などを掲載しました。担当した生活報道部の塩田彩記者が取材を通じて感じたことをお伝えします

 「吃音」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。以前の私の認識は「どもりやすい」という程度のもの。自分の周囲にそれらしき人はいないと思っていた。

 取材を始めたきっかけは、偶然、吃音のある男性と話をしたことだった。特定の言葉に詰まる「難発性」の吃音を抱え、いじめや引きこもりを経験。就職活動では約100社にエントリーしたが、どこにも採用されなかったという。なぜ言葉にどもるだけでそれほどの苦労を背負わなければいけないのか。もっと多くの人に話を聞いてみたいと思った。

 取材をする中で、吃音のある人たちが自分の症状を隠したり克服しようとしたり、さまざまな努力をしていることを知った。詰まる言葉をとっさに言い換えるために、何をどう話そうか常に会話の次の段階を考えている人、知らない人と話すことに慣れようと、買うつもりのない商品の説明を携帯電話ショップで受ける人、仕事の会議で提案説明をする前に、毎日2時間の練習をする人……。私自身も含めた社会の吃音への無理解が、こんなにも当事者を追い詰めているのだということを伝えたいと思った。

http://mainichi.jp/articles/20160318/mog/00m/100/012000c

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