(1)以前にも書いたことだけど、近ごろ対話をきっかけに改めて考えがまとまってきたので、「吃音がある人がSTを目指すことについて」書いておこうと思う。僕は、吃音がある人から「STになりたい」という相談を受けることが少なくない。ただ、その場合は消極的な回答をするようにしている。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
(2)その理由は、STの仕事では高い発話の流暢性が求められ、それ以外の職業に就く以上に吃音がネックになってくる可能性が高いと思うから。敢えてうがった言い方をすると、言語聴覚士は吃音を含む言語障害の専門家だから、なんとなく吃音の症状に対して寛容な仕事だという誤解が少なくない。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
(3)それは一面では間違っていないかも知れない。少なくともSTの同僚は吃音について通り一遍は知識があるから、ひどい無理解にさらされる機会は相対的に少ないかも知れない。ただ、それ以外の職種(Dr、Ns、PT、OT、MSWなど)はそうではない。非常に厳しい視線を向けられるのが現実。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
(4)そして、何よりも患者さんだ。僕自身、構音障害のリハビリで吃ってしまい、「なんで私の担当は障害者なんだ」と言って訓練を拒否され、結果として担当を外されたこともある(念のため言っておくと、職場からは最大限の励ましを受けたので立ち直ることができた。とても感謝している)。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
(5)言語障害のリハビリを提供する主体自身にもそれ(言語障害=吃音)があると言うのは、患者さんによっては耐え難い違和感を覚えるのも仕方ないかも知れない。
話は変わるけど、医療現場では「テキパキさ」が求められる。発話流暢性の低さによって受けるストレスは小さくない。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
(6)昨年7月、自ら命を絶った吃音者は、「テキパキさ」要求が最も高いNs(看護師)だった。不謹慎な連中が、「そもそも看護師の仕事を選んだのが間違い」とを公然と言っているけど、それは死者への冒涜だと思う。しかし、医療現場が吃音がある人にとって厳しい職場であることは間違いない。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
(7)また、STになるためには政府が指定する養成課程(高卒ならば3年間以上、大卒ならば2年間以上)を卒業しなければ、国家試験の受験資格を得られない。養成課程では、合計12週間以上の医療現場での実習をパスしなければならないんだけど、これが吃音者にとって高いハードルになる。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
(8)もちろん吃音だけが原因ではないと思うけど、僕自身も首の皮一枚でギリギリ単位が認定されたような具合で、吃音がある同級生はそこでリタイアせざるをえなかった。大卒課程でも、国リハを除けば学費は最低でも220万円。社会人経験者ならば、在学中に稼げるはずだった埋没費用が上乗せされる。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
訂正。(8)「埋没費用」→「機会費用」
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 25
(9)多くの時間とカネを投入して、その結果が資格も仕事も得られずリタイアでは、あまりにも惨すぎる。ただ、吃音がある人がそうなる可能性が相対的に高い可能性があることは否定できない。だから、「STになりたい」という吃音がある仲間には、慎重になることを求めている。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
(10完)但し、その気持ち自体は大切にしたい。だからこそ、これまで「吃音がある、ST学生とSTの会」(http://t.co/ZrjbxuV26A )の運営に参与してきた。僕たちは、同じ志を持った吃音者のセルフヘルプグループ。いったん覚悟を決めたならば、全力でサポートする。
— Y (@stutteringST) 2014, 9月 24
さて、この情報はどう受け取るべきか?
私はこれは正解に近いと思う。
世の中はハッキリ言って厳しい。特に2014現在はそう感じる。
医療現場の職業にかかわらず全てに当てはまると思う。
吃音者が働けるではないか?と思う肉体労働も現在はチームプレイである。安全確認も声出しもしないとならないし、社訓などの読み上げ、出世すれば他人に指示をだす立場にもなる。サービス業の業界もマニュアル化が徹底されており、何を喋ればいいのか決めてある。吃音者は言い換えは駆使できない。あのーとか、えーっと、なんて使えない。例えばコンビニエンスストアの店員やファミリーレストランの店員やファーストフードの店員が「いらっしゃいませ」が普通に発話できなければどうなるだろうか?想像してみてほしい。もしも携帯電話ショップの店員が吃りだったらどうする?こっちは早く済ませたいのに時間がかかる。
例えばトヨタ生産方式というのがあって「ムダ ムリ ムラ」は徹底的に排除する。
その中に「動作のムダ」がある。
吃音者が他人とコミュニケーションをとるときに吃ってしまい、動作のムダが起こったとする。不用意な動き、これは吃音者にとって致命的である。非吃音者が5秒でホウレンソウが完了するところを吃音者が1分も経過する。それを年間で換算すれば、吃音者を採用すると思うか?私が人事部門なら採用しない。
そしてこの動作のムダが、自動車業界以外にも到達してきた。コミュニケーション社会と言われるそれだ。空気を読み他人との協調性を重要視する。そこにプラス、スムーズな発話ができない、できても時間がかかってしまう吃音者が入り込めるか?企業の人事部門は「普通」の人材を採用する。悲しいがこれが現実でありお察しくださいである。
以前にも吃音Q&Aで書いたが。吃音を持つ子どもの親御さん・保護者が「吃音を持った我が子が将来就職できるでしょうか?結婚できるでしょうか?」と質問するのは親御さんやその家族親戚が「自分の働いている会社の人事部門が吃りを採用しない」と実は知っているからだ。それでも「我が子は大丈夫でしょうか?」と心配になってしまうのだ。
これくらいにしておこう。
本題に戻る。
ツイートの中でも書かれているが吃音のある医師や看護師や理学療法士や作業療法士や医療ソーシャルワーカー、臨床心理士も「発話ができない、会話が難しい」人はなることは難しいと思う。
医療現場での1秒のロスというのは致命的である。吃る人はホウレンソウに1分も時間を費やすが、吃らない人は15秒で済む。企業の人事部門の人間がこのような人材を採用するだろうか?と思うわけである。もちろんこれ以外にも、自衛隊や警察官、消防士、アナウンサーも難しいだろう。
※医師や看護師については救急救命の現場でなければなんとかなるかもしれない。
はっきり言って吃音者には「見えない欠格条項」が存在していると私は感じている。
発話できない人間、会話できない人間。それはもう採用価値はないのだ。しかも発話することに難があるのに障害者手帳も持っていない。障害者手帳すら持っていない「配慮が必要な人材」を雇用するであろうか?
今後は以上のことも考え吃音の啓発啓蒙を行っていかないとならないと思う。
個人的には吃音者は言語聴覚士を目指すより、理系の勉強に時間を費やして、研究をする道を目指したほうがいいと思う。俗に言う、「医師や学者や教授は変人が多い」ということでこの業界は狙い目かもしれない。この業界は発達障害者が多いとも暗黙の了解で言われているのもあるが。
私としては自分自身が吃音者だからという理由で言語聴覚士を目指すよりも、もっと本格的に研究ができる研究者側を目指すべきではないかと思う。研究医や理工学系の道に進み脳研究を行うほうがいいのではないかと。研究により吃音のメカニズム解明や治療法ができればノーベル医学賞にも選ばれるかもしれない。
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