2015年12月9日水曜日

WHO(世界保健機関)のICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の改訂により吃音はどうなるのか?ICD-11について

毎日新聞2015年12月6日 東京朝刊にて
【働きたいのに 電話対応で叱責、リストラ 「身体障害」申請却下 仙台の男性、「実情知って」法廷へ】という記事が掲載された。インターネット上でも閲覧できる。Yahoo JAPANのヤフーニュースでもこの記事が、トップトピックにはならなかったが、目立つ位置に一定期間掲載されていた。

 なめらかな発語が難しい吃音(きつおん)に悩み抜いてきた半生を、法廷で訴えようとしている男性がいる。仙台市の無職、桜田俊介さん(47)は幼い頃からいじめや、からかいに遭ってきた。成人後も電話で不審者や外国人と間違われ、公園で子供に声をかけて変質者扱いされたこともある。吃音が原因で失職し、自殺も考えた。「吃音者が差別される現状を広く知らせたい」と話す。
「精神障害」に分類 実態との差に苦悩も
 世界保健機関(WHO)は、吃音を「小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害」に分類する。これに準じて日本の発達障害者支援法も吃音を精神障害の一種の発達障害に含め、自治体から障害認定を受け手帳を得る場合、精神障害での申請・交付が一般的だ。桜田さんもこれに従えば精神障害者手帳を得られる可能性は高い。
 身体障害者手帳を求めて訴訟に臨む桜田さんは、自身の吃音について「耳が聞こえなかったり、目が見えなかったりという身体障害と何ら変わらない」と訴えている。さらには自分に向いた職を探したいと考えている。
 障害者雇用促進法は企業に一定割合の障害者を雇うことを義務付けているが、どんな仕事をさせるかは企業の裁量だ。身体障害者の方が用意される仕事の幅が広いという現実がある。実際、吃音を精神障害とすることに違和感を覚える当事者は桜田さん以外にもいる。吃音で今年8月に精神障害者手帳を取得し、就職活動をする横浜市の男性(24)は「吃音という障害について面接で理解してもらうのは難しい」と話す。身体障害者手帳があれば就職の可能性が広がると考えている。
 発達障害者の就労を支援する福祉事業所「カフェベルガ」(茨城県つくば市)の吉田美恵代表(66)は「吃音が身体障害だという主張は理解できる。吃音を含めさまざまな症状についてもっと適切な分類が必要だ。桜田さんの問題提起が『(障害者)手帳行政』を見直すきっかけになればいい」と訴訟の行方に注目する。【遠藤大志】


◆記事
http://mainichi.jp/articles/20151206/ddm/041/040/063000c


さて、新聞記事において、世界保健機関(WHO)は、吃音を「小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害」に分類する。と明記されている。これはICD-10と言われるWHO(世界保健機関)が取りまとめている【疾病及び関連保健問題の国際統計分類】から引用している。毎日新聞の記事では、吃音は身体障害者手帳ではないのか?という論調である。


ICD-10は1990年ころの第10版であり、現在第11版であるICD-11改訂作業が行われている。当初の予定より公開が遅延しており2018年となっている。

このICD-11での吃音(きつおん・どもり)の扱いはどうなっているのだろうか?
ICD-11改訂作業の前に2013年アメリカ精神医学会(APA)の定めた『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)が第5版として改訂された。吃音は発達障害である。Neuro developmental disorders (神経発達障害)に分類された。私の推測であるが、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターは、このDSM-5が明確に吃音症を神経発達障害と明記したのを待って、いよいよ、吃音が発達障害であると公開したのではないか?と考えている。


◆DSM-5における、吃音症の分類
小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音) (Childhood-Onset Fluency Disorder (Stuttering))
http://stutteringperson.blogspot.jp/2014/08/dsm-5.html

◆吃音症は発達障害であり精神障害者保健福祉手帳の交付対象であることが判明しました。
http://stutteringperson.blogspot.jp/2014/07/blog-post.html


ICD-11ではどうなっているか?
ICD-11 2018年公開予定ドラフトベータ版によると。

Neuro developmental disorders (神経発達障害)

Developmental speech and language disorders 

Developmental speech fluency disorder(吃音)
という分類になりました。
DSM5と同様、その他の発達障害である。ASD、ADHD、LD、音声チック運動チック、協調性運動障害と同様の場所に吃音が配置されています。

◆ICD-11 Beta Draft (Foundation)
http://apps.who.int/classifications/icd11/browse/f/en#!/http%3A%2F%2Fid.who.int%2Ficd%2Fentity%2F654956298




WHO世界保健機関でも吃音が神経発達障害と認識をしているようです。
2015年現在、日本国内では発達障害者支援法制定10年経過をめどに、発達障害障害者支援法改正が行われる予定です。2016年には改正法が提出されるかもしれません。2016年ではまだ、ICD-11の正式版が発表されていないので附帯決議として、将来、吃音を発達障害者支援法に明記するようにするかもしれません。発達障害者支援法改正当初は吃音やトゥレット症候群の位置づけは、現在の「17文科初第16号厚生労働省発障第0401008号」の文部科学省厚生労働省の連名事務次官通知で対応するはずです。

◆吃音やトゥレット症候群が発達障害者支援法に定義される法的根拠 厚生労働省HPより

◆日本政府は吃音を勝手に障害者にしているという論調について一言



0 件のコメント:

コメントを投稿